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■ヤマサキオサムのBlog - 今、アニメ業界で何が起こっているのか!
2009年5月22日
『アニメーター実態調査シンポジウム2009』を無事に、
一つの形として纏められた事は非常に素晴らしいと思う。
当日、深夜に伝えられたNHKの『ニュース』は国内の一般の方たちにも、
海外のアニメファンにもショッキングだったようだが…。
このシンポジュームと報道で語られた内容だけでは、アニメ業界で起こっている「現在の事象」は理解できないかと思うので
これから解りやすく解説してみたいと思う。
まず、アニメ産業全体が貧しいわけでない事は、多くの作品が世界で重要なコンテンツとして認知され、数十兆円規模の市場に成っている事を考えれば、想像に難くないだろう。
ではなぜ、制作現場のアニメーターがこれ程までに貧しいのか?
よく言われるのは「代理店やTV局が中間搾取しすぎているから」
たしかにここも問題点かもしれない。
しかし、この部分の実状は正確に把握出来ていないので、解ったような事を書くのは避けておく。
遠くない時期に公正取引委員会等が、実態の洗い出しと行政的な指導を行なうと言う噂は聞いているので、今はその展開を見守りたい。
では、振り返って制作現場の現状を。
まず、『話題になった動画担当の新人アニメーターの実態』である。
今回シンポジュームでも発表されたようにデジタル化して以後の動画マンの平均月産枚数は、約500枚平均である。
これに対する単価設定は200〜250円。
よって、月額10万円〜12万円。源泉税1割を引いた手取りは約9万円〜10万円になる。
ここから年金や健康保険料、家賃、食費を捻出する。
東京の家賃は5万〜7万円である事を考えれば、
到底贅沢な生活はできない。
これに対して、同じ新人のペイント(仕上げ)はどうか?
ペイント担当者1人の平均月産枚数は約2000枚。
これに対する単価設定は180〜200円なので、月額36万円〜40万円。
源泉税1割を引いた手取りは約32万円〜36万円となる。
この金額の差はなぜ起こっているのか?
それは、この単価設定が「セルアニメのアナログ時代に決められた物」がそのままスライドした事にある。
かつてセルのペイント作業は、
絵の具の乾き待ちや影の色トレス等、動画と同じように熟練の技術と手間隙が掛かったため、
担当者1人の月産枚数は約700〜1000枚前後だったのだ。
当時、動画もほぼ同様の枚数を処理できた。
それゆえ、20年前の動画マンであるベテランアニメーターたちは「
俺たちの頃は皆、1000枚くらい書いていた」と言うような話を口にする。
だが、当時の動画はトレスマシンの性質上、
鉛筆の実線以外は色鉛筆の色を写し取らなかったために、
一発描きと言う色鉛筆の下書きをアタリで取って、そのままクリンナップする事もできたし、
実線が厳密につながっていなくてもハンドペイントだったために、
色が実線からはみ出して流れ出す事も考えなくて良かったのだ。
影色も裏から塗る必要も無く、現在のデジタルペイント用の動画と比べれば、そう言った意味では、手間隙が非常に軽減されていた。
その事を理解せずに、過去の単価設定をスライドしている事が、
現在の新人アニメーターの生活を困窮させている理由なのではないか。
そして、同時にスケジュールの破綻を招く原因もつくっている。
『上記のような状態が、すでに10年以上続いた結果、アニメ業界で今なにが起こっているのか』
現在アニメ業界において、
まともな原画が描ける若い人材が極端に減って来ている。
その最大の原因は、新人の過酷な労働環境に起因している。
多くのアニメ会社が新人を入れる時に
「自宅から通えるか?」「親からの仕送りはあるか?」を聞く。
その条件がクリアーされないと新人アニメーターは生活出来ないからだ。
この最初のフィルターリングで、アニメの仕事を職業にしたいと思っている優秀な人材の多くが振り落とされ、月収5〜6万円でやっていける人材だけが、業界に入ってくる。
この中には、まだやる気が有って技術もある若者もわずかに残っているが、少なくない数の趣味人も存在するのだ。
仕事としてアニメに関わらなくてもいい人材。
趣味のようにアニメの絵を描いていられるスタッフが、毎年大量に入ってくる。
かつてアニメーターの多くは才能が無いから辞めていった。
だが、現在は頭が良くて技術力のある者から業界を去っていく。
もちろん全員が全員、そうだとは言わない。
中には苦しい生活の中で、必死にアニメーターを職業にしようと頑張っている後輩たちもいる。
だが、そんな真面目で一生懸命な人の隣で、遊びのように絵を描き、同人本を作り、
仕事中にゲームをやったり、アニメや漫画を見て、まともに仕事をしない趣味人なアニメーターが共存しているのだ。
彼らは月額2〜3万円のお小遣いが稼げれば、悠々自適に生活できる。
その姿を観て、やる気のある頭のいい新人はこの業界を去っていく。
学生時代に自分よりも技術力の無かった友達がゲーム業界等で活躍し、月収30万円くらい稼いでいる事を知っているから、こんな馬鹿げたアニメ業界で潰れたら馬鹿馬鹿しいと思うのだ。
その結果、優秀なアニメーターの人材が枯渇していく。
10年もその状態が続いているのだ。
優秀な原画マンが出てくる確率は極端に減っている。
現在、日本のアニメ作品を支えている代表的な監督や作画監督、デザイナー、そして優秀な原画マンは40代〜50代に集中している。
そのほとんどは、すでに20代で監督や作画監督、デザイナーとして活躍していた。
その層がいまだにアニメ業界を支えているのだ。
年々、このスタッフに掛かる付加が増えて来ている。
育ってくるべき優秀な原画マンが、驚くほど減ってしまったからだ。
レイアウトも描けない。
原画もタイムシートもまともに描けない。
だから、演出や作画監督が全部描き直さないとまともな絵にならない。
仕方ないので、ベテランが全てのラフ原画を描いて新人のアニメーターがクリンナップだけをする。
それを「第二原画」などという言い方をするので、
原画マンになったと思ってしまうのだが、20年前はそれは「原画トレス」と言って動画の仕事だったのだ。
今、仕上げや撮影、音響のスタッフが
「監督や作画監督が仕事を抱えてチェック作業を遅らせるから、自分たちに時間が無くなって大変迷惑をしている」といった不満を口にするのを聞く。
だが、この段階で絵を描き直さないと、惨憺たる映像が出来上がってしまうのだ。
そして、それによって「作画崩壊!」とか「出来が悪い!」と叩かれるのは監督であり、作画監督である。
クライアントからの評価もここに集中する。
出来の悪い作品を作ったら、
監督も作画監督も次の仕事が非常に取りづらくなるだろう。
しかし、まともな原画マンは育ってこない。
仕方なく、監督や演出や作画監督が寝る時間を削って絵を描き直すのだ。
作画監督の1本の単価は約30万円。
平均して作画INしてUPするまでに1ヵ月半。
月額20万円そこそこである。
業界歴20数年のベテランアニメーターがである。
その同じ職場で、ペイントの新人が毎月30万〜40万円稼ぐ。
制作会社のプロデューサーは、この現状を解っていながら放置している。
問題を解決するためには、1社だけが予算配分を変えてもどうにもならないからだ。
動画の新人が、まともに生活するのに必要な金額は最低15万円。
これを月産枚数500枚で割ると、最低単価は1枚300円になる。
動画とペイントを合わせた単価は、現在400円〜450円。
その内300円を動画に振り分け、残り100円をペイントに振った場合、
ペイント担当者の収入はいくらになるのか?
月産2000枚×100円=20万円である。
「この予算配分の見直しはなぜ出来ないのだろうか?」
制作会社の統括機関である動画協会の調整機能が正常に働く事を、切に望む。
『アニメーター実態調査シンポジウム2009』を無事に、
一つの形として纏められた事は非常に素晴らしいと思う。
当日、深夜に伝えられたNHKの『ニュース』は国内の一般の方たちにも、
海外のアニメファンにもショッキングだったようだが…。
このシンポジュームと報道で語られた内容だけでは、アニメ業界で起こっている「現在の事象」は理解できないかと思うので
これから解りやすく解説してみたいと思う。
まず、アニメ産業全体が貧しいわけでない事は、多くの作品が世界で重要なコンテンツとして認知され、数十兆円規模の市場に成っている事を考えれば、想像に難くないだろう。
ではなぜ、制作現場のアニメーターがこれ程までに貧しいのか?
よく言われるのは「代理店やTV局が中間搾取しすぎているから」
たしかにここも問題点かもしれない。
しかし、この部分の実状は正確に把握出来ていないので、解ったような事を書くのは避けておく。
遠くない時期に公正取引委員会等が、実態の洗い出しと行政的な指導を行なうと言う噂は聞いているので、今はその展開を見守りたい。
では、振り返って制作現場の現状を。
まず、『話題になった動画担当の新人アニメーターの実態』である。
今回シンポジュームでも発表されたようにデジタル化して以後の動画マンの平均月産枚数は、約500枚平均である。
これに対する単価設定は200〜250円。
よって、月額10万円〜12万円。源泉税1割を引いた手取りは約9万円〜10万円になる。
ここから年金や健康保険料、家賃、食費を捻出する。
東京の家賃は5万〜7万円である事を考えれば、
到底贅沢な生活はできない。
これに対して、同じ新人のペイント(仕上げ)はどうか?
ペイント担当者1人の平均月産枚数は約2000枚。
これに対する単価設定は180〜200円なので、月額36万円〜40万円。
源泉税1割を引いた手取りは約32万円〜36万円となる。
この金額の差はなぜ起こっているのか?
それは、この単価設定が「セルアニメのアナログ時代に決められた物」がそのままスライドした事にある。
かつてセルのペイント作業は、
絵の具の乾き待ちや影の色トレス等、動画と同じように熟練の技術と手間隙が掛かったため、
担当者1人の月産枚数は約700〜1000枚前後だったのだ。
当時、動画もほぼ同様の枚数を処理できた。
それゆえ、20年前の動画マンであるベテランアニメーターたちは「
俺たちの頃は皆、1000枚くらい書いていた」と言うような話を口にする。
だが、当時の動画はトレスマシンの性質上、
鉛筆の実線以外は色鉛筆の色を写し取らなかったために、
一発描きと言う色鉛筆の下書きをアタリで取って、そのままクリンナップする事もできたし、
実線が厳密につながっていなくてもハンドペイントだったために、
色が実線からはみ出して流れ出す事も考えなくて良かったのだ。
影色も裏から塗る必要も無く、現在のデジタルペイント用の動画と比べれば、そう言った意味では、手間隙が非常に軽減されていた。
その事を理解せずに、過去の単価設定をスライドしている事が、
現在の新人アニメーターの生活を困窮させている理由なのではないか。
そして、同時にスケジュールの破綻を招く原因もつくっている。
『上記のような状態が、すでに10年以上続いた結果、アニメ業界で今なにが起こっているのか』
現在アニメ業界において、
まともな原画が描ける若い人材が極端に減って来ている。
その最大の原因は、新人の過酷な労働環境に起因している。
多くのアニメ会社が新人を入れる時に
「自宅から通えるか?」「親からの仕送りはあるか?」を聞く。
その条件がクリアーされないと新人アニメーターは生活出来ないからだ。
この最初のフィルターリングで、アニメの仕事を職業にしたいと思っている優秀な人材の多くが振り落とされ、月収5〜6万円でやっていける人材だけが、業界に入ってくる。
この中には、まだやる気が有って技術もある若者もわずかに残っているが、少なくない数の趣味人も存在するのだ。
仕事としてアニメに関わらなくてもいい人材。
趣味のようにアニメの絵を描いていられるスタッフが、毎年大量に入ってくる。
かつてアニメーターの多くは才能が無いから辞めていった。
だが、現在は頭が良くて技術力のある者から業界を去っていく。
もちろん全員が全員、そうだとは言わない。
中には苦しい生活の中で、必死にアニメーターを職業にしようと頑張っている後輩たちもいる。
だが、そんな真面目で一生懸命な人の隣で、遊びのように絵を描き、同人本を作り、
仕事中にゲームをやったり、アニメや漫画を見て、まともに仕事をしない趣味人なアニメーターが共存しているのだ。
彼らは月額2〜3万円のお小遣いが稼げれば、悠々自適に生活できる。
その姿を観て、やる気のある頭のいい新人はこの業界を去っていく。
学生時代に自分よりも技術力の無かった友達がゲーム業界等で活躍し、月収30万円くらい稼いでいる事を知っているから、こんな馬鹿げたアニメ業界で潰れたら馬鹿馬鹿しいと思うのだ。
その結果、優秀なアニメーターの人材が枯渇していく。
10年もその状態が続いているのだ。
優秀な原画マンが出てくる確率は極端に減っている。
現在、日本のアニメ作品を支えている代表的な監督や作画監督、デザイナー、そして優秀な原画マンは40代〜50代に集中している。
そのほとんどは、すでに20代で監督や作画監督、デザイナーとして活躍していた。
その層がいまだにアニメ業界を支えているのだ。
年々、このスタッフに掛かる付加が増えて来ている。
育ってくるべき優秀な原画マンが、驚くほど減ってしまったからだ。
レイアウトも描けない。
原画もタイムシートもまともに描けない。
だから、演出や作画監督が全部描き直さないとまともな絵にならない。
仕方ないので、ベテランが全てのラフ原画を描いて新人のアニメーターがクリンナップだけをする。
それを「第二原画」などという言い方をするので、
原画マンになったと思ってしまうのだが、20年前はそれは「原画トレス」と言って動画の仕事だったのだ。
今、仕上げや撮影、音響のスタッフが
「監督や作画監督が仕事を抱えてチェック作業を遅らせるから、自分たちに時間が無くなって大変迷惑をしている」といった不満を口にするのを聞く。
だが、この段階で絵を描き直さないと、惨憺たる映像が出来上がってしまうのだ。
そして、それによって「作画崩壊!」とか「出来が悪い!」と叩かれるのは監督であり、作画監督である。
クライアントからの評価もここに集中する。
出来の悪い作品を作ったら、
監督も作画監督も次の仕事が非常に取りづらくなるだろう。
しかし、まともな原画マンは育ってこない。
仕方なく、監督や演出や作画監督が寝る時間を削って絵を描き直すのだ。
作画監督の1本の単価は約30万円。
平均して作画INしてUPするまでに1ヵ月半。
月額20万円そこそこである。
業界歴20数年のベテランアニメーターがである。
その同じ職場で、ペイントの新人が毎月30万〜40万円稼ぐ。
制作会社のプロデューサーは、この現状を解っていながら放置している。
問題を解決するためには、1社だけが予算配分を変えてもどうにもならないからだ。
動画の新人が、まともに生活するのに必要な金額は最低15万円。
これを月産枚数500枚で割ると、最低単価は1枚300円になる。
動画とペイントを合わせた単価は、現在400円〜450円。
その内300円を動画に振り分け、残り100円をペイントに振った場合、
ペイント担当者の収入はいくらになるのか?
月産2000枚×100円=20万円である。
「この予算配分の見直しはなぜ出来ないのだろうか?」
制作会社の統括機関である動画協会の調整機能が正常に働く事を、切に望む。