■ヤマサキオサムのBlog - 絵コンテはアニメーションの設計図

絵コンテはアニメーションの設計図

カテゴリ : 
アニメ監督ひねもす日記
執筆 : 
ヤマサキオサム 2012-9-6 10:34
アニメーションや3DCG映像において絵コンテは、無くては制作自体が出来ない重要な設計図であります。

音楽で言えば、シナリオが作詞であるならば、絵コンテは作曲に当たるもの。

1970年の著作権法改正により、映像作品そのものの著作権は制作会社に帰属することが定められました。(それ以前は映画の著作権は監督に帰属していました)

それ自体は音楽の原版権を制作出資メーカーが有している事と同じであることから妥当な事だと私は思いますが、音楽においては演奏家や指揮者といった実演家と、作詞・作曲者のような原案・原作者の権利は明確に区別されています。

さて、アニメ業界に目を向ければ、シナリオに関しては二次使用料が脚本家に対して適切に支払われていますが、絵コンテにはありません。
これに関しても同様の請求権が成り立つのではないか。
と、実質的に制作に関わっている立場からこの件についての考察を述べます。

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実際、東映アニメーションでは旧著作権法において認められていた監督の権利を尊重し、日本映画監督協会との間で結んだ協定により、演出家への二次使用料を支払っている事実があります。

絵コンテの二次使用請求に関しては、この監督印税協定以上に明確な著作物の二次使用権利です。

シナリオ同様の二次使用料を絵コンテ担当者は要求しても良いのではないか?
音楽の作詞・作曲同様、映像作品のシナリオと絵コンテに関しても双方同等の価値を認める事が、次世代の優秀な監督候補者を生み出す原動力にもなりはしないか?

この話を複数の制作会社のプロデューサーにしたところ「そういうの止めてよ」との返事。
「使えない絵コンテを適当に上げて、監督が全部描きなおすような絵コンテマンにも二次使用料を払うんでしょう?絵コンテは監督がけっこう直してるんだよ」とのこと。

確かにテレビシリーズや劇場作品でも複数人で絵コンテを担当したり、監督がその取り纏めを行っている場合があります。

それに関しては、シナリオでも同様の事例がありますので、その事も含めて以下のような考え方で権利問題の整理をすれば改善されると考えます。

事例1
多くの場合シナリオでは下記のような割合でテレビシリーズのビデオ化による二次使用料の支払いが行われている。

1 セル用ビデオグラム:
本製品の税抜表示小売価格 × 販売数量(総出荷数の90%) × 1.75%
2 レンタル用ビデオグラム(PPT等の収益分配方式のものは除く):
本製品のカタログ記載価格 × 総出荷数 × 3.35%

絵コンテにおいても同様の考え方を基本とし、シナリオと違い監督チェック作業が常に付加されている部分に関しては、上記の絵コンテ使用料のうち8割を絵コンテ担当者、残り2割を監督へ支払うものとすれば問題はないと考えます。
ネット配信や海外販売に関しても基本的な考え方は同様です。


さて、ここまで書いてきてぶつかる問題は、これらの事務管理にかかる手間と経費を誰がどうやって負担し、事務作業を維持していくかということ。

シナリオの場合は、日脚連や放作協のようなシナリオライターの団体がこれらの業務を代行。所属ライターと契約をし、彼らが得る二次使用料の売り上げから数%を管理費として徴収し業務の維持費に充てています。

絵コンテでも、基本的にはそのような組織を作り絵コンテ担当者が所属すればよいのですが、現在のところ皆無です。

そもそも、今それなりに仕事ができている監督は、製作委員会の幹事会社と直接個人契約し、二次使用料を正式に支払ってもらっている人もいますし、シナリオを書けばシナリオの二次使用料も入ってきます。

それでも後続の為にと、絵コンテの二次使用料請求を主張する人はいるのか?
こんなめんどくさそうな提案に賛同する監督たちがどれだけいるのか?


最後にこの提案の締めとして、重要なことをひとつ。
もし絵コンテの二次使用に関してシナリオ並みの料金が絵コンテ担当者に支払われるようになった場合、その者が制作会社の社員だとしても、フリーランスだとしても、年間の売り上げ額は増えるということ。

さらにそのことが、若い世代の目標になり、優れた映像設計者の輩出につながる、と私は考えています。

優れた絵コンテは誰もが簡単に描ける物では有りません。

まず基本的な絵が描けること。加えて映像演出を理解し、編集的なカット割りを計算し、キャラクターの演技付けをイメージし、時には画面を構成している舞台を独自に構築できなければなりません。
カメラの画角や露出の理解、照明効果としての陰影計算も必要でしょう。

それらの技量を持つスタッフの裾野を広げることは、日本のアニメ産業のクオリティーを上げ、さらには販売戦略的にも競争力のある優れた作品を生み出す土台作りにつながるのではないでしょうか。

つまり“絵コンテの著作権を認める”ことは、結果的に投資リスクを抑え、企業及びこの分野の継続的成長につながるというわけです。
この点を理解できるプロデューサーこそ不可欠であり、アニメ業界の発展を握るキーマンなのだと思っています。

実を刈り取るだけの時代は終わりを告げている。
種を蒔かずば芽も出ない。

…とそろそろ感じてる人はいませんかね。

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