メインメニュー
| ホーム ●お知らせ ■狼になりたい ■アニメむかし語り ■てくてく りくりく! ■三原三千夫の全編予告編 ■アニメ監督ひねもす日記 アーカイブ ■若手演出家の苦悩 ●みんなの掲示板 ●ギャラリー ●WEBリンク |
ログイン
パスワード紛失新規登録
■アニメ監督ひねもす日記 - 人材育成に必要なもの
『才能とはなにか?』
昭和50年代半ばに、県立熊本工業高等学校インテリア科を卒業してアニメ業界に入った4人の先輩後輩は現在、全員がTVアニメの監督になっている。
『地獄少女』『クッキンアイドル アイ!マイ!まいん! 』等の わたなべひろし 監督
『PEACE MAKER 鐵』『トリニティ・ブラッド』等の 平田智浩 監督
『魔人探偵脳噛ネウロ』『RAINBOW-二舎六房の七人-』等の神志那弘志 監督
そして、『地球へ…』『イタズラなKiss』等の監督をやっていてる私である。
その後、この業界に進んだ後輩が居るのかどうかは判らないが、私の知る限り私の上下5年間でアニメ業界に進んだ同校の卒業生は100%プロアニメーターとして仕事を成り立たせ、結婚もし、それなりに評価される立場で仕事が出来ている。
アニメーターの離職率が80〜90%といわれる中で、それはある意味驚異的な事実かもしれないが、人材育成を考える上でなにが必要だったのかを知るためには、この自分たちの経験を分析する事がもっとも本質を理解する近道である気がする。
「プロの世界でやっていけるようになるには才能が必要だ!」
学生時代、親にも高校の先生にもそう諭され、アニメーターを目指すよりもっと手堅い、一般的な仕事を目指す事を薦められた。
才能が無いと絵描きでなんか食っていけない。
そう言うことが言いたかったらしい。
だが、その大人たちが助言する時に使う才能と言う物はいったいどういう物なのか?
その事を明確に答えられる人間がどれだけ居るだろう?
才能という言葉でなんだか解かった気になっているだけで、その本質を理解しようとする人間はほとんど居無い気がする。
先の事例を基に考えると、私の先輩や後輩はおそらく才能が有ったのだ。
それはどんな物だったのか?
・絵がものすごく上手かった?
・映像センスがずば抜けていた?
・学習能力が高く、非常に器用だった?
他の先輩や後輩の事は判らないが、私に関して言えばおそらく上記の3要素は全て人並みだったと思う。
学習能力で言えば熊本工業という高校は、県内の実業高校の中ではトップレベルだが、中学段階のクラスの偏差値で言えば中位の偏差値レベルの人間が集まっていた。
私自身、その高校のクラス内でさらに真ん中辺りの成績だった。
映像センスに関しても、アニメや映画は好きで良く観てはいたが、知識レベルで言えばもっともっと映像に詳しく評論家的な知識を持つ人たちが世の中には驚くほどたくさん居る。
絵がすごく上手かったのかといえば、これも学生時代に描いた自分の絵と現在専門学校で教えている学生の描く絵を見比べるとはるかに今の学生たちの方が絵は上手い気がする。
事実、20数年前にアニメーターになった当初、私の周りには絵の上手い人たちが泣きたくなる程たくさん居た。
だが有り難いことに現在、私より絵が上手かった多くの人たちは業界を去っていたりする。
したがって上記の3要素がアニメーターとして『やって行けるか』『行けないか』を決める才能という物ではないことが判る。
では、離職して行く人間と形に成って行く人間は何が違うのか?
『才能の本質はきっとここに有る』
15年間、専門学校で講義していて卒業生のその後を追ってみると、技術的な優劣は10年も経てばある程度緩和され、プロとして必要最低限身に着けるべき技術は誰にだって備わる気がする。
ただ、スタート段階でどんなに絵が上手くても続けていけない人間も存在する。
それはどう言うことなのか?
業界を去る人間は、絵を描く事がそれほど好きではない。
もしくは、アニメーターが描くような他人のデザインした絵を一日中、何枚も描く作業に苦痛を感じるのである。
技術的な能力と精神的な資質は必ずしも理想的な対に成っているとは限らない。
学習能力の高さや手先の器用さを評価し、そういう人間に技術指導することで専門学校や職業訓練施設は人材育成をしている気になっている。
しかし、本来才能とはそんな事では育たないのだ。
『技術があればやっていける!』とか『技術がないからやっていけない!』とか、そんな意識で人材育成を考えていると計画は頓挫する。
たしかに、技術力は大切なのだが10年くらいの長期スパンでみれば、続けていける人間には必然的に技術力は付いてくる。
最も重要な能力は、その仕事を続けていて苦痛でないかどうかだ。
1日中、机に向かって絵を描き続ける事、アニメの動きを想像してキャラクターに演技させる事を楽しめるか?
その素養が有るかどうかがアニメーターでやっていけるかどうかの才能であり、資質である。
その本質は、実は一般業種でも同様だ。
人と話をして接客し、自分が人に薦めたいと思う物の魅力を分析し、その良さを語ることが楽しいと思える人間は営業や接客に向いているだろうが、どんなに学習能力が高くても他人とコミニュケーションをとる事に苦痛を感じる人間は優れた職業訓練を受けて接客ノウハウを学んでも仕事としては続ける事が辛くなる。
逆に接客には向かなくても研究開発や製造業に向く人間も当然存在する。
それら全ての職業に関して求められる才能の本質とは、元来個々それぞれに備わっている精神的な資質によって決まる気がする。
私の高校の先輩後輩はおそらく全員がアニメの絵を描く事が好きだったのだと思う。
才能が有ったとすればその一転に尽きる。
しかし、「そんな事で誰もが監督に成れるのなら今頃アニメ業界は監督だらけだ!」そう思う人も居るだろう。
そこで重要になってっくるのが年齢が離れすぎていない、才能の有る先輩の存在なのだ。
1〜2年上の先輩がどんな事を考え、どんな仕事の仕方をして、どんな風に現状を成り立たせているのか?
その姿を見る事、知る事が、その下に続く後輩たちの指針になる。
たとえて言えば、満員電車に閉じ込められたまま、電車が緊急停止した状態で、車内アナウンスを受けられるか?受けられないか?
その違いと似た状態がアニメーターの新人に起きるのだ。
・電車が止まった原因。
・復旧の目処。
・今後の対応。
それらの情報が劣悪な環境の中で、的確に伝えられれば人は同じ状態でも耐えられるが、何も情報が入ってこないと不安だけが増して、現状から逃れる事ばかりを考えるようになる。
有り難いことに私の場合、二人の先輩が早い段階でアニメーターとして作画監督やキャラクターデザイナーになっていたので「先輩が何とか成っているのなら、自分も何とかなるだろう・・・」と確証の無い自信を心のどこかに持っていられた。
同時に10年、20年上の先輩たちにも恵まれていたと思う。
その辺りの話は次回にするとして、直近の先輩の話をまとめると最も運が良かったのは、わたなべ先輩が『スタジオライブ』からアニメーターを始めた事に尽きるかもしれない。
芦田さん率いるこのアニメスタジオ『スタジオライブ』は、スタッフの業界定着率80%を誇る会社だ。
離職率80〜90%(定着率20%以下)と言われるアニメ業界に有って、このスタジオの存在もまた特質すべきものがある。
監督、作画監督、キャラクターデザイナー,等々・・・このスタジオの出身者には有名なアニメの中核スタッフが数多く存在する。
『人材育成の環境づくり』
アニメーターのギャラの部分を置いておくと、その最も重要な人材育成の要素は技術的な内容も
含め、新人のメンタルコントロール手段に尽きると思う。
少し努力すれば到達できそうな上の立場の先輩の存在。
そしてさらにその上の先輩たちの存在。
その先輩たちが仕事に対して、どのように日々の訓練をして、仕事のステップアップをしているのかを聴く事、見る事、語りあう事。
それら全ての条件が整った環境造りこそ本来、人材育成に求められる重要な要素なのだと考える。
昭和50年代半ばに、県立熊本工業高等学校インテリア科を卒業してアニメ業界に入った4人の先輩後輩は現在、全員がTVアニメの監督になっている。
『地獄少女』『クッキンアイドル アイ!マイ!まいん! 』等の わたなべひろし 監督
『PEACE MAKER 鐵』『トリニティ・ブラッド』等の 平田智浩 監督
『魔人探偵脳噛ネウロ』『RAINBOW-二舎六房の七人-』等の神志那弘志 監督
そして、『地球へ…』『イタズラなKiss』等の監督をやっていてる私である。
その後、この業界に進んだ後輩が居るのかどうかは判らないが、私の知る限り私の上下5年間でアニメ業界に進んだ同校の卒業生は100%プロアニメーターとして仕事を成り立たせ、結婚もし、それなりに評価される立場で仕事が出来ている。
アニメーターの離職率が80〜90%といわれる中で、それはある意味驚異的な事実かもしれないが、人材育成を考える上でなにが必要だったのかを知るためには、この自分たちの経験を分析する事がもっとも本質を理解する近道である気がする。
「プロの世界でやっていけるようになるには才能が必要だ!」
学生時代、親にも高校の先生にもそう諭され、アニメーターを目指すよりもっと手堅い、一般的な仕事を目指す事を薦められた。
才能が無いと絵描きでなんか食っていけない。
そう言うことが言いたかったらしい。
だが、その大人たちが助言する時に使う才能と言う物はいったいどういう物なのか?
その事を明確に答えられる人間がどれだけ居るだろう?
才能という言葉でなんだか解かった気になっているだけで、その本質を理解しようとする人間はほとんど居無い気がする。
先の事例を基に考えると、私の先輩や後輩はおそらく才能が有ったのだ。
それはどんな物だったのか?
・絵がものすごく上手かった?
・映像センスがずば抜けていた?
・学習能力が高く、非常に器用だった?
他の先輩や後輩の事は判らないが、私に関して言えばおそらく上記の3要素は全て人並みだったと思う。
学習能力で言えば熊本工業という高校は、県内の実業高校の中ではトップレベルだが、中学段階のクラスの偏差値で言えば中位の偏差値レベルの人間が集まっていた。
私自身、その高校のクラス内でさらに真ん中辺りの成績だった。
映像センスに関しても、アニメや映画は好きで良く観てはいたが、知識レベルで言えばもっともっと映像に詳しく評論家的な知識を持つ人たちが世の中には驚くほどたくさん居る。
絵がすごく上手かったのかといえば、これも学生時代に描いた自分の絵と現在専門学校で教えている学生の描く絵を見比べるとはるかに今の学生たちの方が絵は上手い気がする。
事実、20数年前にアニメーターになった当初、私の周りには絵の上手い人たちが泣きたくなる程たくさん居た。
だが有り難いことに現在、私より絵が上手かった多くの人たちは業界を去っていたりする。
したがって上記の3要素がアニメーターとして『やって行けるか』『行けないか』を決める才能という物ではないことが判る。
では、離職して行く人間と形に成って行く人間は何が違うのか?
『才能の本質はきっとここに有る』
15年間、専門学校で講義していて卒業生のその後を追ってみると、技術的な優劣は10年も経てばある程度緩和され、プロとして必要最低限身に着けるべき技術は誰にだって備わる気がする。
ただ、スタート段階でどんなに絵が上手くても続けていけない人間も存在する。
それはどう言うことなのか?
業界を去る人間は、絵を描く事がそれほど好きではない。
もしくは、アニメーターが描くような他人のデザインした絵を一日中、何枚も描く作業に苦痛を感じるのである。
技術的な能力と精神的な資質は必ずしも理想的な対に成っているとは限らない。
学習能力の高さや手先の器用さを評価し、そういう人間に技術指導することで専門学校や職業訓練施設は人材育成をしている気になっている。
しかし、本来才能とはそんな事では育たないのだ。
『技術があればやっていける!』とか『技術がないからやっていけない!』とか、そんな意識で人材育成を考えていると計画は頓挫する。
たしかに、技術力は大切なのだが10年くらいの長期スパンでみれば、続けていける人間には必然的に技術力は付いてくる。
最も重要な能力は、その仕事を続けていて苦痛でないかどうかだ。
1日中、机に向かって絵を描き続ける事、アニメの動きを想像してキャラクターに演技させる事を楽しめるか?
その素養が有るかどうかがアニメーターでやっていけるかどうかの才能であり、資質である。
その本質は、実は一般業種でも同様だ。
人と話をして接客し、自分が人に薦めたいと思う物の魅力を分析し、その良さを語ることが楽しいと思える人間は営業や接客に向いているだろうが、どんなに学習能力が高くても他人とコミニュケーションをとる事に苦痛を感じる人間は優れた職業訓練を受けて接客ノウハウを学んでも仕事としては続ける事が辛くなる。
逆に接客には向かなくても研究開発や製造業に向く人間も当然存在する。
それら全ての職業に関して求められる才能の本質とは、元来個々それぞれに備わっている精神的な資質によって決まる気がする。
私の高校の先輩後輩はおそらく全員がアニメの絵を描く事が好きだったのだと思う。
才能が有ったとすればその一転に尽きる。
しかし、「そんな事で誰もが監督に成れるのなら今頃アニメ業界は監督だらけだ!」そう思う人も居るだろう。
そこで重要になってっくるのが年齢が離れすぎていない、才能の有る先輩の存在なのだ。
1〜2年上の先輩がどんな事を考え、どんな仕事の仕方をして、どんな風に現状を成り立たせているのか?
その姿を見る事、知る事が、その下に続く後輩たちの指針になる。
たとえて言えば、満員電車に閉じ込められたまま、電車が緊急停止した状態で、車内アナウンスを受けられるか?受けられないか?
その違いと似た状態がアニメーターの新人に起きるのだ。
・電車が止まった原因。
・復旧の目処。
・今後の対応。
それらの情報が劣悪な環境の中で、的確に伝えられれば人は同じ状態でも耐えられるが、何も情報が入ってこないと不安だけが増して、現状から逃れる事ばかりを考えるようになる。
有り難いことに私の場合、二人の先輩が早い段階でアニメーターとして作画監督やキャラクターデザイナーになっていたので「先輩が何とか成っているのなら、自分も何とかなるだろう・・・」と確証の無い自信を心のどこかに持っていられた。
同時に10年、20年上の先輩たちにも恵まれていたと思う。
その辺りの話は次回にするとして、直近の先輩の話をまとめると最も運が良かったのは、わたなべ先輩が『スタジオライブ』からアニメーターを始めた事に尽きるかもしれない。
芦田さん率いるこのアニメスタジオ『スタジオライブ』は、スタッフの業界定着率80%を誇る会社だ。
離職率80〜90%(定着率20%以下)と言われるアニメ業界に有って、このスタジオの存在もまた特質すべきものがある。
監督、作画監督、キャラクターデザイナー,等々・・・このスタジオの出身者には有名なアニメの中核スタッフが数多く存在する。
『人材育成の環境づくり』
アニメーターのギャラの部分を置いておくと、その最も重要な人材育成の要素は技術的な内容も
含め、新人のメンタルコントロール手段に尽きると思う。
少し努力すれば到達できそうな上の立場の先輩の存在。
そしてさらにその上の先輩たちの存在。
その先輩たちが仕事に対して、どのように日々の訓練をして、仕事のステップアップをしているのかを聴く事、見る事、語りあう事。
それら全ての条件が整った環境造りこそ本来、人材育成に求められる重要な要素なのだと考える。