■ヤマサキオサムのBlog - 『JAniCAは、これから何を目指して進むべきか』

『JAniCAは、これから何を目指して進むべきか』

カテゴリ : 
アニメ監督ひねもす日記
執筆 : 
ヤマサキオサム 2010-8-1 2:01
さて、ピンチヒッターのように代表に就任して2ヶ月が過ぎようとしていますが、つくづくJAniCAの理事職は割に合わないと痛感しております。
前代表の芦田さんから、「よく引き受けたね。大変だよ」と言われましたが、まったくその通りです。
文化庁からの2億円の事業委託を受けていても、理事たちは相変らず旧方針のボランティア運営である事に変わりはありません。
責任と義務だけが重くのしかかり、情報開示の不手際に対しても散々な言われようの中、皆黙々と動いてくれています。

TVシリーズの監督業と平行して、この立場を3年間も続けてこられた前代表には頭が下がる思いです。

とは言え、誰かがやらなければアニメーターやアニメ演出家を取り巻く環境は改善しないのも事実。
その事を考えれば、芦田さんが旗を振られ、その意志に賛同した者としては
『なんとかこの組織をちゃんとした形にして行きたい』そう思うのです。

地道に一歩ずつ、国をはじめとした各業界に信用を積み重ねていくこと。
それが目的達成のための唯一の道だと感じています。

かつてJAniCAが設立される前、今から5〜6年前に私は新人アニメーターの困窮する現状を見かねて、関東経済産業局に現状改善の相談に行った事があります。

一枚200円の動画単価を続けてはアニメーターの新人は育たず、日本のアニメ界は遠くない将来、国際競争力どころか制作力自体を失ってしまう。
「行政指導による最低賃金を保証する方法は無いものか?」と訴えたのでした。

しかし、担当の方から返ってきた答えは、
「なぜ、そんなに低い労働単価なのに皆さん仕事を請けるのですか?」と言う、扱くシンプルな疑問でした。

「一枚1〜5円の袋貼りやネジの仕分け梱包作業の単価が適正か?適正でないか?それはその金額で請け負う人が居るか居ないかで我々は判断します。その金額で受ける人が居るのであれば、それは適正価格なのではないですか?」
と聞かれたのです。

「アニメの場合は袋貼りの内職とは中身が違って…」と仕事の質や業界においての新人アニメーターの意味を懸命に説明したのですが
「では、なぜ会社や業界が自ら新人を育てないのか?」と続いたのです。

確かに、この業界に関係の無い立場から見たら、まったく理解出来ない事が平然とまかり通っているのがアニメ業界の現状です。

そんな折、芦田さんを中心にアニメーターの労働環境最善を掲げて
JAniCAが発足しました。

この三年間、JAniCAは
文芸美術国民健康保険や東京芸能人国民健康保険などの
健康保険への加入促進。
業界人でさえ正確には把握していなかった、アニメーターの賃金体系を調べた
昨年の『アニメーターの労働実態調査』。
そして、今年文化庁から『若手アニメーターの人材育成事業』の運営管理委託を受け、その成果を残すべく日々業務を進めております。

「こんな内容で、新人が育つもんか・・・」等と批判する声も聞きますが、
では声高に叫んでいるあなたは何をしているのか?
懸命に動いている人間を、自分が批判できるほどなのかを問うてみるべきだと思います。

実は私自身「このプロジェクトで優秀な新人が育つのか?」と
内心疑問に思うことがあるのも事実です。

以前このBlogにも書いていますが、アニメーターの若手に必要なのは、
仕事をして最低限生活できる賃金が支払われる事こそが、次世代を育てる土壌を作ると考えています。

少々乱暴な言い方になりますが、技術というものは食えて、続けていけて、周りに優秀な先輩達が居る環境さえあれば、ある程度ついて来るのです。逆にいえば食えなければ、続けたくても続けられないのです。

新人アニメーターの動画単価の見直し。

この改革を行なうためには、個人事業主という弱い立場から訴えるより、
国家プロジェクトとしてトップダウンで行政指導を業界全体に行なってもらい
国内のアニメーターに動画を発注する場合は、最低単価を300円以上にすると言う『業界ルール』を決めてもらうことが必要だと思っています。

そのためには“行政との信頼”をいかに築くかが重要ではないでしょうか。

そんな事をしたら動画の全ては海外に流れるという人も居ますが、そうなったら10年後の日本のアニメ産業は無いと思うしかありません。

現在、若手の優秀なアニメーターの数が目に見えて減ってきている最大の理由は、新人への劣悪な賃金設定が原因で、その事が若い原画マンの質を下げ、作画監督の負担を増し、スケジュールを圧迫し、制作利益率を減らしているのです。

どのみち現状を放置すれば、10年後には日本でアニメなど作れなくなります。
その事が解かっていない業界なら、それまでの業界と言うことです。

さて、そんな話の最後に。
文化庁事業の管理費としてJAniCAにまかされた6000万円の事務管理予算に関して、実際には業界のためにも後輩のためにも、何も動いていないクレーマーの方たちが、さまざまなネガティブキャンペーンを張っているようなので、私から答えられる範囲で話をしたいと思います。

6000万円という額について、会社経営をした事がある人間なら解かるはずですが、アニメの孫受け会社の年間固定費にも満たない金額です。

人件費や地代家賃、光熱費、通信費、設備費、運送費、会議費・・・等々をまともに換算すれば、これだけの事業を管理運営するのに掛かる費用としては、足りないくらいです。
それが使途不明と騒ぐこと自体が私には理解に苦しむ内容です。

選考委員会や育成委員会、ヒヤリングチームなどに協力してもらうJAniCA内外のアニメ関係の皆さんにも時間と労力に応じて、金銭的に労働対価をお支払いしていきます。

「それの詳細な内容を開示しろ!」と騒いでいる方。
ご自分では社会正義のために叫んでいるつもりでしょうが、
いったい後輩や業界のために何をしているのか?

率直にお聞きしたいものです。

現在、本事業に関する費用はまだJAniCAにはまったく入金されていませんので、準備に掛かる経費も全て関係者が持ち出している現状です。
(本件に関して、JAniCA会員からお預かりしている会費からの持ち出しは一切行なっておりません)


JAniCAが掲げるアニメーターの労働環境の改善は、
関係者一人一人の意識レベルの改善から進めていかなければ、実現は程遠いと思います。

自分達を取り巻く環境は、自分自身が生み出している事。

同じ業界に居て、年収1千万円を超えている人間と数百万円にも満たない人間は、何が違うのか?
その本質は、業界の環境だけではなく、自分自身の資質にある事を自覚すべきです。
技術の有無だけが、100%の原因ではないのでは?

こんな事を書くとまた、クレームが来るんだろうなあ・・・。

まあ、それはそれでいいですけどね・・・。

ちなみに、6月の総会で白紙委任状を集めて、前代表を解任した等という噂も飛び交っているようですが、
芦田さんが委任状を使って解任された事実はありません。

私はその日の理事会にも運営委員として参加しておりましたが、
辞任された前理事の方々はご自分の意志でそれが良いと判断されてお辞めになったのだと、現場に居た人間として認識しております。

もし仮に、噂のような解任動議が発動したのであれば、参加していた会員の多くがその現場を目撃しているはずです。

総会の警備に関しては、たしかに過ぎた人数になっていたと私も感じましたが、
前日までのJAniCA内部(芦田代表と神村理事)の人間関係の拗れが総会に影響する事を恐れ、
監事が最善の方法を取っていたと、後日の理事会で報告を受けました。
お二人は結果的にそのJAniCA内部のゴタゴタの責任を感じて、辞任されたわけです。

大変長文になってしまいましたが、思うところをまとめてみました。


現在私が監督を担当している『薄桜鬼』、おかげさまで好評の内に秋から第二期が始まります。
睡眠時間を削ってのJAniCAの関連作業がボランティアって言うのもどうなんだろう?
そんな思いも有りますが。
諸先輩、後輩たちのため、と思ってここはふんばりどころかと。

『人が動けば、時代が動く!』

アニメ関係者は今、自分達に風が吹いている事に気づくべきです。

今、ちゃんと動けた人間は次代に何かを残せるかもしれません。

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