■井上俊之のブログ - こんな時でも、こんな時こそ

こんな時でも、こんな時こそ

カテゴリ : 
井上俊之のブログ
執筆 : 
井上俊之 2011-2-6 13:23
さて、今回はこの騒動と全く関係(なくも)ない話を
1月15日、今年初のジャニカ定例理事会の場所に予定より20分程早くに着き、ふと横のビルを見るとそこには紀伊国屋書店。時間は有意義に過ごしたい質なので、寸暇を惜しんで6階(美術書売り場)に向かう。私は本屋が好きです。本屋とCD屋と飯屋さえあれば他にはいかなる店も私には要らないと言っても過言でない程です。と言いながら実は読書はほぼ全くしません(こんな所で自慢げに言うことではありませんが)ので、どの本屋に行っても、行くのは写真集と美術書のコーナーだけです。私が無教養なのも「作文」が大の苦手なのもこの読書嫌いのせいなのでしょう、きっと。いや間違いなく。

で、その時の戦利品はと言うと
「WALT DISNEY ANIMATION STUDIOS The Archive Series ANIMAITION」
「特殊効果アニメーションの世界」
こんな時でもアニメのことを考えている自分にあきれたり、(奥さんに)あきれられたりの2冊。いやこれは、こんな時こそ「愛している」アニメーションに思いを馳せ、荒んだ気持ちを癒そうという本能なんだと思うことにしよう。
締めて9600円也(高い!その上重い!)

1冊目はディズニーの新旧織り交ぜた作品の生の原画の筆致まで解るほどに一点一点大きく載った豪華本です。どれも素晴しく中でも一際見入ったのは、若い頃より憧れているミルトカール(Milt Kahl)さんの原画です。原画1枚1枚の無慈悲なまでに対象の特徴を描き出すそのデッサンの素晴しさに圧倒されます。ミルトさんはおそらく長いアニメーションの歴史の中でも最も優れたデッサン力の持ち主の一人だと思います。
アニメーションにおけるデッサン力と言うのは、絵画のそれとはやや違ったニュアンスで使われる事があります。普通絵画の世界で言われるそれは対象を正確に写し取る力といった意味合いで使われますが、アニメの場合はキャラクターを正確に描く力という以外に、そのキャラクターのフォルムを維持しながら、「少しずつその角度、ポーズ、大きさを変化させて描くことが出来る力」といった意味合いで言うことがあります。ミルトさんはそのどちらの意味に於いても非常に優れていますが、特にその後者の力は驚異的といっても良い程です。ミルトさんの作画はその膨大な枚数の原画(ディズニーアニメの作画は日本のそれよりもずっと多くの原画を要します)の中で本当にあきれる程鮮やかで美しいフォルムを維持し続けます。
ディズニーの特に初期の作品、「ファンタジア」「ピノキオ」「バンビ」等々に於けるミルトカール、フランクトーマス、オーリージョンストンさん達の仕事は今後古びるどころか増々その輝きを増して行き、現代に溢れるハンパな「ゲイジュツ」などよりも余程「芸術的」で価値のある物になると思います。
古い物で70年以上も前の物なのに感心する程綺麗に保存された原画を見て、つくづく「ああ、我々は彼らと基本的に同じ事をやっているんだなあ(もちろんレベルの差は置いておいて)」と改めて思ったり、私も彼らと同じように、歴史の一部になって時代も違う異国の人にさえも感嘆してもらえるような仕事が出来たら本当に幸せなことだなあ、と思ったりします。そうなれるようこれからも一生懸命原画を描きたいとつくづく思います。

2冊目の本に関してはまたの機会に。

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