●「アニメーション・クリエイティブ・テクノロジー・フォーラム(ACTF)2017」アフターレポート

 2017年2月11日(土)に「光が丘区民ホール」で開催された 「アニメーション・クリエイティブ・テクノロジー・フォーラム(ACTF)2017」の模様です。

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入場受付の様子

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イントロダクションの様子

写真3
メインセッション会場には多くの業界関係者にお集まりいただきました

写真4
シンポジウムでは、各セクションからの多様な意見をいただきました

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名刺交換会には、多くの方にご参加いただきました

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セミナールームでは、具体的な事例について熱のこもった発表がされました

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展示会場では、実機を触ったり、機能説明を受けたりしていました


(敬称略)

■メインセッション
メインセッション1:「デジタルツールによるコンテ制作の効果と課題」
制作会社:株式会社デイヴィッドプロダクション
登壇者:津田尚克(ディレクター)、笠間寿高(ラインプロデューサー)
内 容:現在、日本アニメーションはTVアニメに限らず、多様なフォーマットの作品制作が求められてきており、3DCGとの連携、ゲーム版権の作品、PVなどの需要増加に伴い、スポンサーサイドも変化している中、普遍的なフローともいえる、絵コンテ。そこでのデジタルツールを活用することでどんなメリットや現状での課題があるのかを、実作業者目線にて今後の運用、未来予測も含めて説明いただいた。

メインセッション2:「Creators in Pack大阪スタジオのフルデジタル作画元請け制作報告」
制作会社:株式会社クリエイターズインパック
登壇者:はたなか たいち(プロデューサー)、谷口 健太(アニメーター)
内 容:2016年10月放送のTVシリーズ「バーナード嬢曰く。」において、フルデジタル作画でのアニメ制作を達成し、「2015年からデジタル作画を開始した理由」「紙から離れることへの『苦難』と『克服』」「フルデジタルによる劇的『進化』」「地方スタジオとデジタル作画の『ワルツ』」など、デジタル作画"珍道中"を解説いただいた。

メインセッション3:「『正解するカド』におけるデジタル作画 実践編」
制作会社:東映アニメーション 株式会社
登壇者:渡辺正樹(シリーズディレクター)、りょーちも(演出)、小倉裕太(アニメーションプロデューサー)
内 容:オリジナルTVシリーズ案件である『正解するカド』はフルデジタルでの制作を基本としている。原画、演出、作画監督チェックなど従来では定着しにくい工程の制作手法を本編での実際のカットと弊社自社開発のデジタル管理ツールを交え紹介いただいた。

■シンポジウム
登壇者: 入江泰浩(監督・演出・アニメーター)、 白石直子(株式会社ミルパンセ 代表取締役・プロデューサー)、 鴨田 航(株式会社ミルパンセ アニメーター)、 山下清悟(株式会社クリーク・アンド・リバー社 クリエイティブディレクター)、 中西康祐(株式会社旭プロダクション アートディレクター/VFX)
司 会:轟木保弘(株式会社ワコム チャネルマーケティング シニアスペシャリスト)
内 容:近年の作品数、放送分数の増加に伴い、市場のクオリティ要求が高くなる一方で、アニメーション制作の人的リソースの不足やスケジュールの悪化が叫ばれている。デジタル作画はその福音と果たしてなりえるのか、単なるツールの違いではなく、もっと俯瞰(ふかん)的視点から抜本的に見直さないといけないのではないか、など各セクションの有識者を交えてその真相と未来について探った。

■セミナー
セミナー1:「スキャナとデジタル作画ツール活用による制作工程効率化」
株式会社トリガー
登壇者:土田栄司(株式会社トリガー デジタル管理)
内 容:トリガーではデジタル作画の利用は、シリーズにおいては断片的な運用となり、制作工程にはまだ至っていない。実際トリガーでは、作品のクオリティ、時間、コスト、をクリアするには、手描きの優位があると考えられている。デジタル作画に移行するには、よりデジタルのメリットを身近に感じてもらう必要がある。高速なスキャナ、紙の感覚に近い入力デバイス、実用的になりつつあるソフトウェア。それぞれを運用した、デジタル作画運用例を提案した。

セミナー2:「セルシス×神風動画 CLIP STUDIO PAINTセミナー 〜クリスタの今とこれから〜」
株式会社セルシス「CLIP STUDIO PAINT」
登壇者:斎藤拓也(有限会社神風動画 デジタル作画部 アニメーター)、山腰 蒔(有限会社神風動画 デジタル作画部 アニメーター)、成島 啓(株式会社セルシス 代表取締役社長)
司 会:武田暁雄(株式会社セルシス マーケティング部)
内 容:アナログに迫る抜群の描き味を御評価いただき、多くのスタジオ様で御導入いただいているデジタル作画ツール『CLIP STUDIO PAINT』。 本セミナーではクリスタを作画業務にフル活用し、そのノウハウを詰め込んだ書籍を刊行予定の神風動画様に、実演を交えて御説明いただいた。またセルシスからは、既存のワークフローや制作体制を活(い)かしながら御導入いただくための、タイムシート情報・セル画像の汎用的な形式での入出力機能など、今後の開発方針についても案内した。

セミナー3:「ToonBoom最新ワークフローの紹介」
ダイキン工業株式会社「Toon Boom」
登壇者:Francisco Del Cueto ToonBoom Animation CTO
内 容:既存のトラディショナルな手法から最新のテクノロジーまで幅広く対応し、全てのアニメーション制作工程をカバーするToonBoomの最新ワークフローを紹介した。海外の制作においてはスタンダードであるこのツールが、どのように日本の制作ワークフローにマッチするか御理解いただけたかと思う。また日本に向けた最新機能やツールを紹介し、日本市場に向けた取り組みを紹介した。

セミナー4:「日本のアニメーション業界の独特な制作方法に対してTVPaint Animationはどのように対応できるか。」
TVPaint Developpement「TVPaint Animation」
登壇者:Menzin Lise   TVPaint Developpement 海外業務担当
内 容:世界各国のアニメーション業界は、制作方法において多くの共通点がある。弊社のTVPaint Animationが日本で活用されるようになり数年経過したが、日本のアニメーション制作のやり方は非常に独特だということが理解できた。これを受けて弊社が、日本のユーザーの皆様の声を聞いて開発した機能について紹介した。また、ニーズに応えるよりもニーズを先取りするという方針の下で行ったTVPaintオンラインストアの改善とユーザーアカウントシステムについても説明した。

セミナー5:「OpenToonzのご紹介」
株式会社ドワンゴ「OpenToonz」
登壇者:岩澤 駿 東京大学大学院情報学環 助教
内 容:オープンソースのアニメーション制作ソフト「OpenToonz」を紹介した。全体の説明に加え、既存の工程に組み込んで無理なくOpenToonzを使うためのノウハウについて解説した。また、マッドハウス様によるQAR工程への導入事例と、スタジオポノック様による色彩設計への導入事例を紹介した。

■展示
株式会社セルシス「CLIP STUDIO PAINT」
TVPaint Developpement「TVPaint Animation」
ダイキン工業株式会社「Toon Boom」
CACANi「CACANi」
株式会社ドワンゴ「OpenToonz」
株式会社サードウェーブデジノス「ドスパラ」
コダックアラリス ジャパン株式会社
・株式会社横浜アニメーションラボ/ねこまたや (ユニバーサルアニメーションタイムシート)
・進藤恒 (iPad Pro向け絵コンテ、作画アプリ)
・薄山館株式会社 「正法坊」(アニメ制作進行業務支援特化型アプリ)
株式会社クリーク・アンド・リバー社

■資料展示
一般社団法人 日本動画協会
一般財団法人 デジタルコンテンツ協会
CG-ARTS
CGWORLD

■サテライト会場ビューイング
専門学校 札幌マンガ・アニメ学院
国際アート&デザイン専門学校
日本アニメ・マンガ専門学校
京都精華大学
専門学校 九州ビジュアルアーツ

■名刺交換会
登壇者も含め約200名近い方々にご参加いただきました。


■開催結果のまとめ
東京会場
・事前受付数:317名(昨年:396名、昨々年:415名)。
・来場総数:249名(昨年:299名、昨年:316名)。
 内訳は、アニメーション制作事業者:213名、メーカー:8名、教育:5名、官公庁・団体:9名、プレス:14名

サテライト会場(北海道、福島、新潟、京都、福岡の合計)
・事前受付数:14名(昨年:未実施、昨々年:未実施)。
・来場総数:140名(昨年:11名、昨々年:未実施)。
 内訳は、アニメーション制作事業者:14名、教育:14名、学生:111名、官公庁・団体:1名

■参加したみなさんの感想(抜粋)
●今後の期待(抜粋)
・選択項目の開催日を複数にしてほしいという内容と酷似いたしますが、メインセッションとソフトセミナーの時間帯が完全に重なるのであれば、日にちを分けていただきたく思います。
・時間が被らない様に分けて欲しい。例えば、企業向けとクリエイター向けとか上級者と初心者とか。
・時間の都合ですべての講演が聞けなかったので、もし可能なら講演の映像などを配信していただけると大変ありがたいです。
・全部見たかった。 一つの大部屋にして順次ではダメなのか? セミナーの部屋は狭すぎ、席も少なすぎ。 スタッフの教育不足。
・セッションとセミナー両方見てみたかったので、複数日で双方見られるようにしてほしい。
・セミナーは提供メーカーの許可次第では後から動画アーカイブで試聴できるようにして頂きたい
・展示場所のスペースを大きくしてほしい。同時に複数で話を聞けるくらいのスペースはほしい。
・部屋の広い会場を望みます。
・広い会場。
・できれば、愛知県(名古屋)でもサテライト場を用意していただけると嬉しいです。
・内容をワークフローなどではなく技術的な内容にしてほしい
・デジタル作画、行程管理だけではなく、CGにもフォーカスの当たった内容を希望します。
・作画とCGの融合についてや、お互いに期待する事や望む事などを聞けると大変うれしいです。
・引き続き、各社の取り組み紹介。失敗事例。対策事例。今後の課題の共有。
・デジタル導入検討の人向けの機材の提案やソフトを使った具体的なカットの作り方手順の説明があるとありがたいです。
・タブレット作画を未導入なので、ハード面、ソフトの使い方、3Dソフトとの連携や各ソフトを行き来する時に発生する問題点なども聞けると助かります。個人的にはシンポジウムの白石様のお話が運営面で一番為になりました。
・イベントとしての質を上げて欲しい。機材による音質・画質、各セッションにおけるスムーズな運び等…
・Adobe Animate の最新情報を知りたかったです。
・本の展示の他に販売もしてくれたら有難いかなと思いました
・平日にして欲しい。

●自由記述(抜粋)
・本会はアニメ業界全体の志気をデジタル化に向けて・・という点で有意義で今後も継続してほしい流れだと思いました。
・デジタル化がドンドン進んで行くのが身にしめて感じた
・作り手、メーカーの半々でデジタル作画について語り合う、このようなイベントは大変貴重なものだと思いました。
・非常に意味のある内容で、素晴らしいセミナーだと思います。長く続くことを期待しております。
・興味深く普通は知り得ない情報を知ることができてよかったです。
・勉強になりました。
・なかなかこういうセミナーは少ないので今後もよろしくお願いします。また、サテライト会場ではなく、福岡でも直接開催して欲しいです。
・ぜひこのような機会を増やしていただくことで、アニメ業界を次の段階にステップアップさせてもらいたいです。
・これからも変化し続けるアニメ業界の貴重な技術を得る機会としてよろしくお願いします
・毎回内容がオムニバスなので、1つテーマに沿った発表を継続して報告発表してほしい
・第一回から内容は変わっていない上、質問の時間も(結果的に)削られており、大変失望した。
・作画のデジタル化にまつわるワークフローの変化について各社どのように考え、取り組んで、どう言った問題が出ているのかなどのもう少し踏み込んだ話を聞きたいです。
・メインセッションがクリップペイントだけで残念でした。これまでのように他ソフトの事例も見て参考にしたかったです。
・クリエイターズインパックさんの仕事のやり方は作画をやる身としては一番、気持ちに沿っていて、デジタルは使えませんが一緒に仕事をしたい会社だなぁと思いました。東映さんは人の募集をしていましたが、適正が無ければ何ヵ月かかっても無理など(それはそうなんですが)教育体制も保証も分からず、かなり敷居が高いと感じました。セミナーは部屋が小さいために入れなかったので、ちょっと残念でした。
・聞いた中では、東映アニメーションのお話が一番面白かったです。特にりょーちもさんのお話が分かりやすかったので、毎年登壇していただきたいです。また、CLIP STUDIOを使ってらっしゃるということでしたので、フォルダの構成をぜひ見てみたいなと思いました。
・東映さんの発表は衝撃的でした。ほとんど3DCGですね。手書きのアニメーターさんのこれからが心配ですし、本当にデジタル作画の方法が確立するかわからない感じですね。セルシスさんのツールは未来を感じましたが、パン指示など撮影指示には対応していないみたいで残念です。クリエイターズインパックさんの発表は見れずに残念でした。また機会がありましたら、宜しくお願い致します。
・とても素晴らしい機会を与えていただきありがとうございました。今回は特に東映さんのセッションが素晴らしかったですね。神風動画さんのしっかり用意されたセミナーなども有意義でした。
・会場について:展示フロアが狭く混雑していたので、もう少しゆとりがあるといいと思います。
・展示会場が狭かったのと、セミナーと並行して来場者同士で勝手連的に話をする場があっても良いかと思いました。
・展示会やセミナーの広さをもう少し広くしてほしいです。展示会で話を聞くにも一苦労でした。
・今回の会場の性質上、セミナー待ちが待機できるところが限られ、またキャパオーバーになるケースもあったので、待機室を設けてセミナー中は中継をしていただきたいです。
・今回セミナーに参加しましたが会場自体が狭く立っていることが多く疲れました。マイクの本数も音量も不備が多くスムーズな進行とはいいがたかったです
・会場狭い(セミナールーム、展示室)
・もう少しセミナー場所が広いと有難いです
・セミナー会場の隣が展示会場になっていましたが、壁が薄くて、展示会場のざわめきがセミナー会場まで響いていました(そのため、聴きとりにくいことがありました)。あと、出来れば「光が丘駅」よりは「練馬駅」近辺の方が助かります(都心に近いので)。
・セミナーを行っていた会議室の大きさにちょっと不満が残りました。
・セミナーの係員(学生ではない)の対応・運営・スキルがまずく、フォーラムを開催するレベルではないと感じました。「アニメ向けならこの程度でいいでしょ」「手弁当だからね」といった意識があるのなら、主催者側からその意識を変えるべきだと思います。海外のフォーラムを視察し、その運営レベルを肌で感じ、来場者にストレスを与えないように心がけて欲しいです。ちなみにシンポジウム会場は底冷えがしましたし、プロジェクターの解像度の問題で、表示が読めないことが多かった。総合的にホスピタリティがチープな印象で、それが「日本のアニメの現状」を別側面から象徴している気がしました。プロフェッショナル度、テクノロジー度、業界としてのイケてる度を、もっと演出した方がいいと思います。
・音声の質、というかボリュームコントロールがサテライトだと全然できておらず、登壇者が何を言っているか分からない所が多々ありました。
・業界全体としてある程度ソフトの規格統一もしくはソフト間の互換性を持たせて欲しい。複数のソフトが必要となると購入も熟練も困難。
・他社のソフト導入を横目で見て探り合いしている間はデジタル作画は普及しないと思います。
・そろそろデジタル作画の業界標準をクリスタに決めていいんじゃないでしょうか。
・若い人があまり見受けられなかったので参加してくれると良いと思いました。
・紙作画そのままの従来の作り方を否定しませんが、デジタル作画ならではの作り方として各社、スタジオごとの個性もあって良いと思います。
・私の様にデジタル未経験者には、専門用語等が少々理解不能でした。アニメーターとしてベテランでもデジタルは初心者レベルと言う人もいると思うので、そういう人向けのセミナーもあれば良かった。
・作業環境のデジタル化で出てくる問題の解決ヒントには、他業界のメーカーのノウハウと共通する面が多いと感じました。若い世代が活躍するアニメ業界だけに、他業界に多数居る(アニメファンの)中年以降のメーカーノウハウを持っている人達からノウハウを持ってくるのも一つの方法ではないでしょうか?更にはCACANiのように産学連携でのツール開発は日本でもできないものかと思います。
・今回初参加でした。会場の場所が駅前なので、方向音痴にとっては非常に助かりました。地方の個人アニメーターなので、情報が入ってきづらく、今ほとんどの動画がデジタル作画だということをはじめて知りました。私は静岡で活動しているので、クロッキー会などが名古屋辺りでも開催されたらいいな、と常日頃思っております。今回参加して、デジタル作画のメリットデメリットを聞くことができ、いいスキャナも知ることができて良かったです。TVPaintの試用版をいただいたので、さわってみたいと思います。また開催された時は、参加したいです。
・会場に行っていた方々は既にデジタル作画を導入している方が大半であると思う。そこに対して、デジタル作画のメリットを説いてもあまり意味が無い。来ていない人に対して、どのようにして導入を促すのか、また、メーカーに対してどの様にして規格統一をしてもらうか、という場にすべきであると思う。既に業界内では、導入したソフトによる派閥のような物が出来つつあり、このままでは10年後も現状と変わらず、平行線のままな気がしてならない。
・フリーのアニメーターに対してのデジタル作画導入サポート、支援制度など
・デジタルの方もしないといけないということなので勉強をしたいです!
・デジタルの進歩によって誰でも簡単にアニメーションを作れるようになってほしい。
・タブレット作画を導入したことによる健康被害なども課題としてあるのかな……と思いました。
・アニメ業界についていろいろ知れてよかったです。
・iPadProを活用しての可能性をもっと探って欲しいなと思います。
・ジャニカにはせっかくの機関なので、デジタル化の各社の統一化など取り仕切ってデジタル化にするなら業界まとめて指揮して欲しい
・スタッフさんも丁寧でしたし、JAniCAの活動にも興味をもつきっかけになりました。

■総括
 昨年は練馬駅至近の「Coconeriホール」(座席定員500名/他合計830平方メートル)にて開催したが本年は同会場が使用できず、光が丘駅に隣接した「光が丘区民ホール」(座席定員300名/同450平方メートル)に会場を移しての開催となり、利用可能面積が約2/3に減少した。そのために、申込受付人数については細心のコントロールが必要な状況となってしまい、出展者/セミナー講演者にも窮屈な運営となってしまった。また、メインセッション会場が3階、展示/セミナー会場が5階に位置していたため来場者の移動にも多少の不便が発生してしまった。

 来場者の総数については会場収容人数の関係で抑制的となってしまったが、来場者の内訳を見ると作品作りに直接関与するアニメーター・演出が95名、それ以外の職種が118名とほぼ同数の来場があった。昨年までは、経営者や制作デスクなど各社制作ラインを整備・導入する役職の参加比率が高かったことを考えると、実際に自分で使うことになる実制作者の来場が増えたことが本年の大きな特徴と言える。ACTFではメインセッションとセミナーがほぼ同時並行で開催されるが、そのセミナーの参加状況は、開催順にトリガー:83名(入りきれた方のみ)、セルシス:72名、ToonBoom:60名、TVPaint:52名、OpenToonz:30名と各回ほぼ満席の状況となり、アンケートにも手狭である等の厳しいご意見を多くいただく結果となってしまった。セミナーは(メインセッションと比較して)各ツールのより具体的に使い方について興味を持つ方が参加する内容のため、満席の状態が続くということは、それだけ実制作者の来場が多かったことを意味する。
 メインセッションでは、デイヴットプロダクション、クリエイターズインパック、東映アニメーションと規模も立地も作品傾向も大きく異なる3社それぞれの事例をご講演いただいた。アンケート結果からも各講演は高い評価があり、来場者にとって有意義な内容であったことが分かる。
 昨年は時間の都合でシンポジウムを開催できなかったが、アンケートではシンポジウムを開催することへの要望が高く、また主催するACTF事務局としてはメインセッションやセミナーを運営するだけでなく業界のトレンドや今後の方向性を示す必要性も感じていたために、本年は業界内で先進的な取り組みを行っている方々にご登壇いただいた。しかし、先進的ではありつつも実践的な取り組みをしているが故に、如何に納品のためのリスクを低減しつつも新しい技術を導入するという堅実な視点での発言が多く、来場者が期待するような刺激的な言葉は少なかったように感じられた。

 シンポジウム終了後には、希望者のみで名刺交換会を行った。実際に来場された方のうち参加申込み時点で129名の申込みをいただき、当日は登壇・出展された方々も参加された。メインセッションやセミナー、展示などで感じたことを話題にするだけでなく、今後の業界像などについて各所で積極的に話をするなど、非常に盛況な場となった。

 本年から、正式にサテライト会場(北海道、福島、新潟、京都、福岡)でのビューイングを実施し、最終的に140名の方に視聴を頂いた(該当施設の教員、学生を含む)。東京の本会場では施設収容人数の都合で業界関係者のみの受付となってしまったため、結果的に関東圏のアニメ関連教育機関の方々の参加ができなくなってしまう弊害も発生してしまった。関東圏/関西圏に多くのアニメ関連教育機関が集まる実情を鑑みると、それらの教員等への適切な情報提供には課題が残る。また、ご登壇いただく各社は業界内向けに特殊な許諾を得た講演内容のため、今後も一般(無制限)の配信はできず、アニメーターが多く居住する地域(関東圏、関西圏、中京圏、福岡等)の教育機関とのより一層の関係強化に努める必要がある。

 来場者アンケートからは87.2%の次回開催希望があり業界の熱気を伺うことが出来る。しかし、来年への期待を見るとそれぞれの項目が拮抗していることが分かる。これは、来場者の層が広がることでそれぞれの求める分野が平均化されてきたことが推測できる。本年は、定員30名程度の規模でほぼ隔月でセミナーを開催したが、来年度はその開催要望がより高くなることが予想される。
 来年度の開催については、来場者の満足度を上げるために、関係機関とより緊密に連携し、交通の便の良い立地や、利用可能面積の広い施設での開催を実現していきたい。

■メディア等での記事
(マイナビニュース)
ジョジョを手がけた制作会社が語る「絵コンテ」デジタル化のメリット - アニメ制作者向けフォーラム「ACTF2017」

(アニメーションビジネス・ジャーナル)
ACTF2017 デジタルアニメ制作の方向示す講演やセッションで盛況

(おたぽる)
【ACTF2017】アニメ制作のデジタル化で制作陣のジェネラリスト化が進む? 作画を撒く前に工程をどこまで詰められるか

(セルシス)
CLIP STUDIOソリューション イベント・協賛 事例
アニメーション・クリエイティブ・テクノロジー・フォーラム(ACTF)2017