アニメ制作に業として従事する個人を対象とした労災保険の特別加入について

一般社団法人日本アニメーター・演出協会
代表理事 入江 泰浩

 労災保険は、労働者の業務または通勤による災害に対して保険給付を行う制度であり、 本来、フリーランス等の個人事業主を対象とされておりません。 しかし、労働者以外でも、業務の実情などから、 労働者に準じて保護することが適当と認められる一定の個人事業主(注1)には、 特別に任意加入が認められています(特別加入制度)。

 JAniCAは、アニメーター・演出をはじめ、アニメ制作を仕事とする方々(アニメ制作従事者)の約7割以上が フリーランス、個人事業主であるところ(注2)、アニメ制作現場の環境を改善し、 日本におけるアニメーションの持続的な発展可能性を高めるべく、 国民健康保険組合への団体加入や定期健康診断の実施、 フリーランス協会を介した賠償責任保険や所得補償保険など、 アニメ制作従事者を対象とした社会保障の充実、 セーフティネットの拡充に努めて参りました。

 2020年6月29日、厚生労働省の「労災保険制度における特別加入制度の対象範囲の拡大」に関するパブリックコメントに際し、 JAniCAは上記の観点からアニメ制作従事者を対象とする対象範囲の拡大を要望。同年9月5日「アニメ制作者の「ケガや事故」に関する調査」を実施。 短期間にもかかわらず、85人もの方々からご回答をお寄せいただき、同月26日に報告書を公開しました(注3)。これらの結果を踏まえ、 同年10月19日には労働政策審議会(労働条件分科会労災保険部会)第90回「特別加入制度の見直しに係る関係団体からのヒアリング」において、 アニメ制作事業者の状況を説明し、「アニメーター及び演出等、アニメーション制作事業者」を特別加入制度の特定業種に加えていただくよう、 改めて要望を行いました(注4)。その結果、同年12月8日、同審議会第92回で芸能従事者等と合わせ、新たにアニメ制作従事者を 労災保険の特別加入制度の対象とすることが合意されました。

 2021年3月9日には厚生労働省から各都道府県労働局長に対して「労働者災害補償保険法施行規則等の一部を改正する省令及び 労働者災害補償保険法施行規則及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行等について」施行通達がなされ、 同年4月1日から制度上はアニメ制作に関わる皆さまも労災保険に特別加入できるようになりました(注5)。

 労災保険の特別加入には、特別加入団体を通じて行うことが必要なため、JAniCAでは、同年3月30日から「労災保険の加入意向調査」(注6)を実施し、 アニメ業界の需要と保険業務の継続性について慎重に検討を行いました。 そして、同年7月1日にJAniCAを母体とした特別加入団体「全国アニメ制作 従事者労災保険センター」(注7)を設立して、同年9月14日より保険加入の受付を開始いたしました。


(注1)個人タクシーや個人貨物運送業者、土木・建築のいわゆる一人親方、漁師など

(注2) JAniCA「アニメーター実態調査2019」
http://www.janica.jp/survey/survey2019_report.html

(注3) JAniCA「アニメ制作者の「ケガや事故」に関する調査 報告書」
http://janica.jp/survey/IndustrialAccident.pdf

(注4) 同審議会第90回資料1(JAniCA)
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000684025.pdf

(注5) 令和3年4月1日から労災保険の「特別加入」の対象が広がります
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/rousai/kanyu_r3.4.1.html

(注6) JAniCA「労災保険の加入意向調査」
http://www.janica.jp/events/insurance/insurance20210329.html

(注7) 全国アニメ制作従事者労災保険センター
https://anime-rousai.org


本件に関するお問い合わせは、JAniCA事務局[労災加入担当](postmaster@janica.jp)までお願いいたします。