1/24秒計 ストップウォッチの開発動機


◆問題背景◆

 世界的に評価の高い日本のアニメーションであるが、 その制作過程において、「尺を計る」という行為が、 極めて重要な作業のひとつとなっている。 ここでいう「尺」とは、映像の単位である「カット」や、 カット内における個々の芝居・出来事の時間の長さのことである。 ひとつひとつの部分の尺がつなぎ合わされることによって、 作品のテンポや動きの快感が生み出されるとともに、 それらが総合された時に「作品」あるいは「番組」として 定められたトータルの尺に収まっていることも求められる。 番組長30分のTV番組の場合、概ね平均300カット、動画3,000〜8,000枚で制作されているが、 「絵コンテ」担当者は、スポンサの意向や脚本、番組長、カット数等を 高いレベルで勘案しつつ1話の「絵コンテ」を描き上げている。 さらに、その絵コンテを元に、各カットを原画マンが「原画」にしていく。 これらの作業において、「ストップウォッチ」は欠かせない仕事道具となっている。 しかし、日本のアニメ制作においては、映画フィルムの特性に則して1秒を24コマとして計算してきた。 デジタル化された今日も、それは変わらない。 従って、一般的なミリ秒スケールのストップウォッチでは、 計測尺の換算等において換算作業が煩雑になっている。

 また、ストップウォッチをさらに細分化すると「デジタルカウント式」と「アナログ針式」の ストップウォッチに大別できる。これらの両者を比較した場合、 演技の動作のバランス配分を考える際にはアナログ針式の 「針の運行が視覚的に見えること」が有利に働いている。

 アナログ針式のストップウォッチについては、現在国内で入手可能なものは「一周30秒計」 のみが1社の提供のみとなっている。以前にはスタジオジブリ関係者により 一周6秒の1/24秒計という特注品が300個程度製作されたが(詳細はこちらを参照ください)、 現在では職人不足等の理由により入手・製造が実質的に不可能になっている。 また、今後の製造業の進展を考えると、「一周30秒計」すら入手が難しくなるものと思われる。

◆問題解決の方策◆

 日本のアニメーターのとって有益なツールとしてのストップウォッチを開発するにあたり、 上記の問題背景を踏まえて以下のように実装方法を検討した。

◆実装方法案◆

(1)機械方式-アナログ針式ストップウォッチ
  →職人不足で製造ができない。出来たとしても非常に高価になってしまう。

(2)プログラム方式-デジタルカウント式ストップウォッチ
  →製造コスト(開発費、製造ライン確保)が高くなってしまう。
  →針の運行が視覚的に確認できない。

(3)プログラム方式-アナログ針式ストップウォッチ
  →既存品に似たものが存在しないため製造コスト(開発費、製造ライン確保)が非常に高くなってしまう。

(4)iPhone/iPodアプリ
  →クリック感がないため、使い勝手に難がある

(5)携帯端末向けプログラム
  →使い勝手に難がある

(6)WindowsPC向けプログラム
  →安価でできる、ワイヤレスマウスで代用可能

◆実装における制約条件◆

(1)秒<->コマの換算機能を有する
(2)安価な方法で実現をする
(3)針の運針を視覚化する
(4)クリックの感触を実装する
(5)一般的なストップウォッチのインタフェースを実装する
(6)ワイヤレス、あるいは、それに準じた形とする

◆ソフトウェア開発◆

 前述の「実装方法案」と「実装における制約条件」から、Windows用ソフトウェアの開発を行った。