■アニメーター・演出のためのデジタルツール勉強会

『アニメーター・演出のためのデジタルツール勉強会』(第1回)アフターレポート

 去る11月22日(金)にワコムにて行われました、 『アニメーター・演出のためのデジタルツール勉強会』(第1回)の模様です。
 興味はあるけど機材の準備などで個人のアニメーターではなかなか手を出しづらいデジタル作画について、 今回セルシス・ワコム両社のご協力を得ることが出来ましたので実験的に勉強会を開催いたしました。 勉強会には、直接声がけした有志の方にご参加いただきました。


ワコム製「Cintiq Companion Hybrid」等の機材一式をお借りしました


セルシス・中山貴博氏とワコム・轟木保弘氏が講師を務め、
森田・笹木がアニメーターとしてサポートを行いました。


初めて触る機材で悪戦苦闘


参考キャラクター(笹木理事作成)を元になんとか描き進めていました


■勉強会の概要
・本勉強会の意図説明(森田理事/約10分)
・ペンタブレット基本操作(ワコム・轟木保弘氏/約30分)
・Stylosの説明(セルシス・中山貴博氏/約1時間)
・制作実習(約2時間)
・意見交換(約15分)

■制作実習の課題
・レイアウト:構図の大ラフをとる程度。時間がないので背景原図は省略
・ラフ原画:最低3枚、できれば5枚。連続した絵を描くことを最優先。
例えば、振り向きなら「髪の毛の残し」や「動きの揺り戻し」など、普段の仕事と同程度の効果を含める。
・原画清書:1、2枚程度でも原画を清書。その際は、普段の仕事と同程度の密度を目指す。
例えば、1段で十分なので影をつけてみる。キャラクターの白目の色トレス、まぶたの二重線などが描けるか試してみる。
・動画:時間の許す範囲で、任意に。
・仕上げ:時間の許す範囲で、任意に。

■勉強会の様子
参加された皆さんはアニメーターとして経歴は十分ですが、デジタル環境での作画は、 初心者の方から経験者まで、様々です。冒頭に、ワコム轟様、セルシス中山様から説明を受けましたが、 最初のうちは操作方法を理解することで悪戦苦闘していました。 しかし、ある程度触る中で勘所をとらえたようで、いろいろな試行錯誤を繰り返して、 自分なりの理解をされているようでした。
「制作実習の課題」については時間不足で仕上げまでは到達できず、 原画を複数枚描くのが精一杯のようでした。

※参加したみなさんの感想(抜粋)

(意見交換での内容)
Stylosについて
・基本的な操作方法を覚えれば仕事でも使えるかもしれない。
・意外と覚えるところは少ない感触。
・手書きと較べると、もどかしいと感じる部分もある。
・仕事だから手順がスムーズなのは大事。
・操作は難しいが、慣れが第一だろう。
・クイックチェッカー目当てでコアレタスを買ったが、あまりにも分からないことが多すぎる。
・印象としては「思っていたよりも対応できるかもしれない」ところと、「あ、これはちょっとストレスをかかえる」というところがあった。
・Stylosは制作会社ベースの手続き的な設計なので、「クイックチェッカーの延長版」が欲しい。
・自分が手描きで培ってきた方法論が、デジタル化することでズレるのは苦しい。
・動きを描いていく方法論を含めてデジタル化したい。

デジタルツールについて
・(動画ではなく)設定を描くためにタブレットを使っている。色をつける、頭のサイズを微調整などが便利。
・止め絵はツールで書くけれど原動画も描いてみたい。どういうふうになるのか興味がある。
・紙だと絵とか動きが今までやってきた癖に引っ張られて「今までのパターン」に収まってしまう。デジタルだと新しく脳には刺激になるかもしれない。
・手描きだと脳内のイメージで描かざるをえないが、デジタル作画であれば自分の脳内のイメージを一パターンを書き出して、それを反転したり変形したり組み合わせたりなど、手描きでは決して出来ないフォルムや表現ができるかもしれない。
・卑怯な手ではあるが、実写の画像を取り込んで、そのままなぞるとか。ただし、そのままなぞっても使えないので、手描きで色々と加味する必要はある。デジタルならではの作業。

動画の再生について
・Stylosは「描いてすぐ動く」感触はちょっとない。
・指パラをやっていて手がシンドイときがある。ボタンを押して絵を送れるのはラク。
・パラ(紙の落ちるスピード)が脳内で変わってしまうので、デジタルでは客観的に確認できる。

インターフェースについて
・今のiPhoneのようなマニュアルがなくても理解できるユーザビリティが必要。しかしこれは難しい。
・階層とか、レイヤーとかは、Photoshopが理解しやすい。
・原画と原画の行き来がむずかしい。
・トライアンドエラーのサイクルを素早く繰り返したい。

勉強会について
・一人では習熟するのが難しいので、やりながら誰かに聞ける環境が欲しかった。
・板タブを買ったが挫折した。回りに知っている人がいたら習得出来たかもしれない。
・勉強会を実施する際には、参加者のコンピューターリテラシー度合いを揃える必要がある。
・実業務(紙に作画)との違いを確認しながら進めて欲しい。
・操作に際して「儀式(単なる手順)」と「理解すべき事項」を区別してほしい。
・デモンストレーションは、アニメーターが最短の経路で説明してほしい。細かいバリエーションは覚えきれない。

(アンケートでの内容)
一枚の絵/紙に描くときにはない良さ・便利さ
・消す作業がラク
・下描きと清書のレイヤーが違う点
・位置をずらしたり、ちょっとした調整が簡単に出来る。「元に戻す」が使える。

一枚の絵/紙に描くときにはない不満
・操作に慣れや知識が必要な点
・ペン先が接地したときに、描かれる線が若干ずれたりするので、細かいところが描きにくいです。
・直感的に操作したいのに、いくらかの手順を踏む必要があり、もどかしいところが多々あった。

動き(連続した絵)/紙に描くときにはない良さ
・絵を何枚でも好きな濃さで透かすことが出来る
・下描きと清書のレイヤーが違う点
・動きをすぐ確認出来る(3コマ打ちなど正確に見られる)
・動きのチェックが、紙で行うよりも判断しやすい。

動き(連続した絵)/紙に描くときにはない不満
・操作に慣れや知識が必要な点
・ライトテーブルパレットで透かしたものが使いづらい(慣れの問題かもしれません)
(ライトテーブルパレット使用時→)前の絵を修正したときに、それが更新ボタンを押さないと反映されないのも不便に感じました。
・一枚絵や、他の絵を微調整しながら進めていきたい場合、ダイレクトに他の絵を編集出来ないので手間に感じた。パラパラの操作をもう少し直感的に操作したい。

「Cintiq Companion Hyblid」を使ってみての感想
・普段使っている液タブとかわらない(むしろいいくらい?)のでよかった。
・描き心地の良さに驚いた。もっと使いづらい物だと思っていた。もう少し使いたい。(10年前にタブレットを使っていましたが、絵は描きづらく挫折している)
・もっと勉強が必要だが、慣れれば便利そう
・イラストを描くにはちょうど良い大きさだが、アニメだとやや小さい。
・機能の説明を聞いたときには欲しいと思うくらい魅力的に感じたのですが、PC画面がまるごと収まっているので、アイコンや文字が非常に小さく、ペンタブで操作したときに狙い通りのところをクリックするのが難しかったです。
・Stylos上で、ペン先とポインタのズレが直らなかったのが気になりました。(設定で調整しましたが、あまり改善しなかった)

Stylosがアニメーション制作現場で普及するために必要な機能、改善点は何ですか?
・Flash並の使いやすさが実現すること。インターフェイスの大幅な改善。
・作画は連続した絵(演技)を作るのに、そのための機能があまりにも不便。スピーディさが欲しい。
・原画の仕事について言えば、紙! ペン! シート!といった、単純なものの方が受け容れやすいと思います。
・一つのウインドウで紙の行き来が出来た方が使いやすい。
レイアウト段階でも原画段階でも、一枚の絵を描き始めるまでの手順(ファイルの設定やライトテーブルパレットに前の絵を入れていく作業など・・・)が多すぎるので、そこが改善されたらありがたいです。
・インターフェイスをもう少し直感的に操作できるようにして欲しい。描いたものがダイレクトにライトテーブルに反映されて欲しい。
ペン先や消しゴムの大きさをポインタ上で判断したい。回転や反転が楽に出来ると良い。

デジタル作画を行うにあたって、最も障害となると思われるものは何だと思いますか?
・他のセクションとのやり取り
・原画→演出→作監→動画→仕上げの行程のうち、「演出→作監→動画」の工程がデジタルに対応できていないため。今はデジタルで作画を行える者のみが勝手に使っている。(一部の会社をのぞく)
・アナログとデジタルのやりとり。制作工程が完全にデジタル化できるかどうか。
・価格と操作の複雑さ。
・デジタル機器やソフトの操作を理解・習得する過程だと思います。
・操作の複雑さ、とっつきにくさ。機能は少なくても、直感的に楽に操作出来た方が良いです。

自由記述
・現状、Stylos はアニメーションの原画を描くという作業には向いていないソフトだと個人的には思う。動画では多少改善すれば十分だと思います。 Flashを使っているアニメーターの自分としては、スタイロスが優っているのは描き味の部分だけなので、大幅な変更をメーカーに期待したい。ソフトのインターフェイスはFlashを踏襲して、描き味を生かせれば、そこで自分としては乗り換えの対象になります。 あとは日本のセルアニメスタイルだけでなく、アートアニメ的作風やカラーイラストを動かせるところまでいければ、画期的なアニメ制作ソフトになるのではと思いました。
・今回初めて使ったソフトで、正直良いのかどうかまでは分からなかったです。もしかしたら良いのかもしれないし。普段の仕事は細かい原画が多いので、向いていないのかもしれない。ただ、絵を拡大したり下の絵がハッキリ見えるので、可能性を感じた。次があるならもう少し細かい作業も試してみたい。前からタブレットの購入を迷っていたが、一人では無理だと感じた。(ソフトを使いこなせない)※普段交流のない人と会えたので、もう少し話が出来ると良かったかも。
・普段なかなか触れることのないツールを体験することが出来てよい経験になったと思います。
・今後はStylosに限らず、FlashやAfter Effectsなどの技術にも触れてみたい。特にFlashでのラフ作成の方法を学んでみたいです。
講座内で作る課題の内容は「ボールを動かす」など、一枚の描写が楽なもので進めれば、もう少し先の工程まで進めたのではないかと思います。

参加 正会員:4名、無料正会員:2名